彼岸へ渡る船104 あの世へ持って行ける貯金
「あの世へ財産は持って行けない…」
よく言われる言葉です。
たしかにお金をいくら貯金しても、なくなった後、お浄土へそれを持って行くことはできません。
ではありますが、
「実はあの世へ持って行ける貯金もあるのですよ」
ということをお伝えいたします。
-あの世へ持って行ける貯金。
それは、一人ひとりが心の中に蓄えた、「功徳・人徳・智恵・覚り」という貯金であります。
~皆さん、それぞれに、ご自身の預金通帳をお持ちだと思います。
そしてそれらは恐らく、あなた自身が誕生してから、お作りになられた通帳だと思います。
で、恐れ入りますが、その通帳の、今日現在における「預金残高」を、頭に思い浮かべてみてください。
さて、そこにある残高、それは、いかにして積まれたものでしょうか…?
そう、言うまでもなくそれらは、皆さんご自身が何らかの形でお稼ぎになった金員を、預け入れてきた結果ですよね。
けっして他人のお金を取ってきて、形成されたものではありません。
そして続いてお考えいただきたいのは、
「では、現在高とは、通帳を作ってから今日まで、預け入れてきた金額の総額か?」
ということです。
これはそうではないですね。
通帳に入金するばかりで、一切出金はしない、という方は、まずいらっしゃらないと思います。
ですから、
「預金残高=入金額-出金額」
ということになります。
当たり前ですが、あなたが通帳を作る前、預金残高は0円でした。
ですが今、そこには恐らく、残高がある。
それは各人の、勤労努力の賜物に他ならず、一般論として付け加えるなら、その残高が大きければ大きいほど、人生の自由度は増すと考えます。
お伝えしたいことは、これと同じ構造が、私たちの心(いのち、魂)においても成されている、ということです。
一人ひとり、この世に生まれてきて、置かれた環境の中、その都度その都度、「生き方の選択」をして、今日に至っています。
それら言動の一つひとつの積み重ねが、今日の自分です。
自分が、言ったこと、行ったこと。
それが「プラス」の方向に働いた時、すなわち、善なる行為、優しい言葉、笑顔、感謝、正直、親切、忍耐、精進、人を助け、人の心を明るくし、人の心を安心させる…等々。
これらが行われるとき、人の心という通帳には、「功徳・覚りの入金」がなされます。
その逆に、それらが「マイナスの方向」に働いた時、すなわち、悪しき行い、冷たい言葉、不機嫌な顔、ウソをつき、こらえ性なく、ワガママ、怠惰、人を傷つけ、人の心を暗くし、不安にする…。
これらが行われるとき、心の預金が引き出されます。
そして、「預金残高=入金額-出金額」は、動かしがたい事実でありますから、それによって、「今日現在の自分」が形づくられているわけですね。
この「功徳・人徳・智恵・覚り」という貯金も、やはりその残高が大きければ大きいほど、人生の自由度・幸福度が増すのは自明。
さらに結論として申し上げれば、私たちはその「心の預金通帳」を持って、浄土へ旅立つのですし、その通帳は、来世へも繰り越されてゆく仕組みです。
というわけで、こうした視点で、人生を見つめなおすのも一興かと存じます。
私たち一人ひとり、「心の通帳」に、どれだけの残高を積むことができるのか?
どうかマイナス勘定で旅立つことのないよう、心したいと思うのです。